2013年7月1日月曜日

全日本民医連会長声明: KYOTO HEART Studyデータ操作の全容解明と日本臨床試験での論文不正の再発防止を強く訴える

【全日本民医連会長声明】KYOTO HEART Studyデータ操作の全容解明と日本臨床試験での論文不正の再発防止を強く訴える

2013年7月23日
全日本民主医療機関連合会
会長藤末衛
 7月11日、京都府立医科大学は、KYOTO HEART Studyに関する調査結果を発表した。この発表によると主要エンドポイントである心血管疾患系複合ポイントの発生数ではカルテ記載データと解析に用いられたものとの間に大きく隔たりがあることが明らかになった。この事実は、ディオバン錠(一般名:バルサルタン)の心血管イベント抑制を証明したとするデータがおよそ科学的根拠とは無縁だったことを意味する。人に使用される医薬品の、その有効性の根幹に関わる論文であり、臨床研究に対する信頼を揺るがしたものとして放置することは許されない。
 臨床研究の当事者である松原氏と元ノバルティスファーマ社員、そして当事者が所属していた京都府立医科大学とノバルティスファーマ社は、今回のデータの操作について、全容解明に対して責任を持ち、なぜこうした行為が生じたのかを一刻も早く明らかにするとともに医師・薬剤師、国民に対して説明をすべきである。
 今回のバルサルタンの臨床研究を広く日本の臨床現場へ宣伝してきた日本高血圧学会などの専門医も医師・薬剤師、国民に対して説明をすべきである。
 また、ノバルティスファーマ社が、今回のバルサルタンの心血管イベント抑制を論拠としてディテール活動を繰り広げディオバン錠の販売実績が構築されてきたことは明白な事実である。この研究結果の誤りが明確になったのであれば、その結果もたらした収益については国に返還すべきである。
 今回の臨床研究は製薬企業と大学の利益相反を伴っている。製薬企業から独立し、真に患者の立場に立った臨床研究が実施できるよう、厚生労働省や文部科学省としても医師主導の臨床研究への経済的な援助を行うべきであり、国・厚生労働省は再発防止の手立てを急ぐ必要がある。
 日本におけるアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)は7成分(8銘柄)が発売されている。国内で販売されているARB製剤の市場規模は5113億円(2010年IMSデータ)まで増大しており、全血圧降下剤市場の約半分を占める規模になっている。そのような状況の下で日々熾烈な市場獲得競争を行っており、今回のKYOTO HEART Studyは、ディオバン錠が他のARB製剤に比べて優れていることを示すために行われたものである。
 厚生労働省は、医療費抑制の下に後発医薬品の使用促進を掲げている。アンジオテンシンII変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)はすでに多くの後発医薬品が発売されている。しかし、日本のARB製剤とACE阻害剤の比率は、81.6%対18.4%である。米国32.4%対67.6%、欧州35.0%対65.0%となっており、日本におけるARB製剤の使用が大きく突出している。このことが今回の事件の背景にあると言わざるを得ない。
 厚生労働省は、今回の事態を重く受け止め、効能・効果で認められたもの以外での臨床研究結果を用いた製薬企業による営業宣伝活動を厳しく規制すべきである。また、利益相反の開示を徹底すべきである。
 全日本民医連は、一日も早い事件の全容解明と、再発防止を求め、医師主導臨床研究における薬事行政の在り方の見直しと、製薬企業のかかわり方についても抜本的な見直しをすることを求める。
以上



http://megalodon.jp/2013-0731-1057-12/www.min-iren.gr.jp/seimei-kenkai/2013/130723_01.html


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