2013年4月30日火曜日

京都新聞: 患者「別の薬、不安も」 府立医大病院、ノバルティス使用停止

http://www.kyoto-np.co.jp/top/article/20130614000023
http://megalodon.jp/2013-0616-2224-36/www.kyoto-np.co.jp/top/article/20130614000023

京都新聞:【 2013年06月14日 08時49分 】

患者「別の薬、不安も」 府立医大病院、ノバルティス使用停止


血圧降下剤バルサルタン(商品名ディオバン)の臨床試験をめぐる問題で、京都府立医科大付属病院(京都市上京区)が販売元のノバルティスファーマの医薬品を原則使用停止にしたことに対し、患者からは薬の切り替えに不安の声が上がっている。同大学は「悪質性が高ければ停止を継続する」としているが、臨床試験を実施した大学側への患者の不信感も強い。
 府立医大の臨床試験は2004~09年に松原弘明元教授を中心に進められ、今年になって「データ解析に誤りがある」などとして論文が撤回された。ノ社の社員がデータ解析を担当したが、大阪市立大所属と記されていた。「不適切な関与」とノ社も認め、府立医大病院は5月24日からノ社の医薬品を原則使用停止とした。
 停止対象はバルサルタンを含め47種類で昨年度の取引額は約3億円。外来受け付けなど約20カ所に説明文を掲示、担当医からも患者に個別説明しており、「大きな混乱はない」(同病院)という。
 バルサルタン問題は大学の調査委員会が検証している。約3千人の臨床試験でデータが多く、最終の結論はまだ先になる見込み。停止措置をどうするかは「調査委員会の結論を見て決める」(同病院)といい、解除の見通しはない。
 患者からは「薬の切り替えを不安に思う人もいるが、患者は弱者なので医師には言いづらい」(63歳女性)、「一方的な決定。別の薬で同じ効能が得られるのか心配な人もいる」(40歳男性)など不安の声が出ている。
 「臨床試験で製薬会社への利益誘導があったのなら、日本の医療の信頼性は地に落ちる。製薬会社と大学の癒着を断ち切るべきだ」(53歳男性)と、ノ社や臨床試験を行った大学への批判も強い。
 同病院の対応についてノバルティスファーマは「病院の判断は大変残念だ」とコメントしている。【 2013年06月14日 08時49分 】


毎日新聞: 降圧剤論文:京都府立医大に不信 医学界「批判かわし」

降圧剤論文:京都府立医大に不信 医学界「批判かわし」

毎日新聞 2013年06月01日 02時30分




記者会見する京都府立医大付属病院の北脇城・副院長(左)ら=京都市上京区で2013年5月23日午後7時39分、森園道子撮影
記者会見する京都府立医大付属病院の北脇城・副院長(左)ら=京都市上京区で2013年5月23日午後7時39分、森園道子撮影

 降圧剤バルサルタンの臨床試験問題で、京都府立医大病院が「抗議するため」と製薬会社ノバルティスファーマとの取引を停止したところ、「当事者意識が足りない」「批判をかわすためでは」と、逆に大学側への批判を招いている。同大の臨床試験の論文は、ノ社の社員を関与させていたことが発覚して公平性が疑われ、まだ疑惑の渦中にあるためだ。
 「京都府立医大の無責任さに怒りを感じる。被害者のように振る舞い、製薬企業だけに問題があったような対応は当事者意識がなさすぎる」。5月28日の参院厚生労働委員会。この問題を取り上げた薬害エイズ被害者の川田龍平氏(みんなの党)は、語気を強めた。
 府立医大病院は同23日、「癒着を疑われかねず、抗議の意を示した」として、ノ社の医薬品を期限を定めず取引停止にすると発表。同病院の薬剤購入費は年間約40億円、そのうちノ社分は約3億円を占める。
 だが医学・医療界の視線は冷ややかだ。日本医学会の高久史麿(たかく・ふみまろ)会長は会見で「大学は社員の関与を知っていたのではないか。論文が撤回されたからと縁を切るのはおかしい。両方責任がある」と突き放した。日本医師会の今村聡・副会長も「自分たちには悪いところがないと思われるのは、いかがなものか」と苦言を呈した。
 「身内」の目も厳しい。ある府立医大職員は「最終的な顧客は患者であることに思いが至らないのだろうか」と首をかしげる。同大OBの医師は「責任転嫁して、大学から目をそらしてもらうための執行部のパフォーマンスだ」と嘆息する。【八田浩輔、河内敏康】
 【ことば】降圧剤臨床試験問題
 降圧剤「バルサルタン」(商品名ディオバン)が、脳卒中などを防ぐ効果が高いとする京都府立医大の臨床試験論文に、販売元のノバルティスファーマ社員が社名を伏せて関与していたことが発覚。ノ社から多額の寄付金も提供されていた。東京慈恵会医、滋賀医、千葉、名古屋の各大学の同種の試験にも同じ社員が関わっており、各大学が論文データが不正操作されていないかについて検証を始めている。

毎日新聞: 疑惑の薬・バルサルタン:/下 日本医学に深まる不信 成長戦略、阻む恐れ

疑惑の薬・バルサルタン:/下 日本医学に深まる不信 成長戦略、阻む恐れ

毎日新聞 2013年06月23日 東京朝刊
 「医療は2兆円の輸入超過だが、日本のイノベーション(技術革新)で反転させられると信じている」。安倍晋三首相は今月14日、国民向けの動画で、「成長戦略」における医療分野への期待を熱く語った。
 カギを握るのは産学連携の成否だ。政府は、世界の健康医療産業が2030年には約530兆円と、今の約3倍に増えると試算する。iPS細胞(人工多能性幹細胞)を作製してノーベル賞を受賞した山中伸弥京都大教授のような研究者の力も結集して、再生医療や創薬などを成長へのエンジンに育て上げようと意気込んでいる。
 だが、そんな戦略に水を差す形となっているのが、3月末に表面化した降圧剤「バルサルタン」の臨床試験疑惑だ。
 販売元のノバルティスファーマ(東京)は、京都府立医大など5大学に臨床試験を提案。「他の降圧剤に比べ、バルサルタンの方が脳卒中の危険性を下げるなどの優れた効果がある」と結論付けた論文を宣伝に活用してきた。だがノ社は、社員が統計解析に関与していたにもかかわらず、情報開示をしていなかったことや、府立医大側に1億円超の寄付をしていたことで、疑惑を招いている。データの不自然な一致など論文の内容自体に疑問が呈されていることも問題を大きくさせている。
 産学連携には、「企業から資金援助を受けた研究者の仕事を信用してよいのか」という疑念がついて回り、ぬぐい去るには金銭に関する情報公開が不可欠となる。「8月に東京で、アジアや太平洋地域の主要医学誌の編集部が一堂に会する国際会議がある。主要なテーマは、研究者と製薬会社の金銭関係と情報公開のあり方だ。バルサルタンの問題が話題の中心になるのは間違いない」。国際医療に詳しい渋谷健司・東京大教授はこう話す。
 米国の有力経済誌「フォーブス」も、府立医大の論文が撤回(取り消し)されたことや、ノ社が社員の臨床試験への関与を謝罪したことなど、一連の問題の記事を5本報じている。「日本の産学連携のあり方に海外から疑念を持たれたことは、日本発の医薬品の国際的な信用にとって大きなマイナスとなった」。日本医師会の今村聡副会長はこう語り、この問題が成長戦略に影響することを懸念する。
        ◇
産学連携の一方の当事者である日本の研究者への信頼も大きく揺らいでいる。米科学誌に昨年発表された報告によると、「捏造(ねつぞう)かその疑い」で撤回された生物医学や生命科学分野の論文数は、米国、ドイツに続いて日本が3位。昨年は、元東邦大の麻酔科医による「世界最多」172本の捏造が判明。今年は既に、バルサルタンの臨床試験を行った府立医大の松原弘明元教授が関係した14本で不正が発覚している。バルサルタンとは別の研究テーマだった。
 研究不正を許す日本の土壌に厳しい目が集まる中で、今回の問題は起きた。府立医大の臨床試験論文を撤回した欧州心臓病学会誌の編集長、トーマス・ルッシャー医師は4月、誌上で世界の科学不正の歴史をまとめた。最近の問題として紹介した二つのうちの一つが、日本のバルサルタンの臨床試験だった。「日本で臨床試験に懸念が発生した。まだ詐欺かは明らかでないが、論文の正当性に影響を与える懸念だ」
 バルサルタン問題への日本社会の対応を世界が見ている。(この連載は河内敏康と八田浩輔が担当しました)


http://mainichi.jp/select/news/20130623ddm002040087000c.html

http://megalodon.jp/2013-0630-2152-41/mainichi.jp/select/news/20130623ddm002040087000c.html

http://mainichi.jp/select/news/20130623ddm002040087000c2.html

http://megalodon.jp/2013-0630-2153-33/mainichi.jp/select/news/20130623ddm002040087000c2.html




毎日新聞: 疑惑の薬・バルサルタン:/中 臨床試験に懸けた製薬企業 不透明な産学連携



疑惑の薬・バルサルタン:/中 臨床試験に懸けた製薬企業 不透明な産学連携

毎日新聞 2013年06月22日 東京朝刊
 「パワーが違う」
 2007年以降、こんなコピーと共に降圧剤バルサルタン(商品名ディオバン)の広告が、大手医療雑誌に続けて掲載された。薬を車のエンジンに模し「JIKEI HEART」のエンブレムが輝く。同年4月に東京慈恵会医大が発表した臨床試験を前面に出し、他の薬と比べたバルサルタンの「強さ」をアピールしている。
 降圧剤は、体にどう作用して血圧を下げるかによって複数の種類がある。バルサルタンを含む「ARB」と呼ばれる種類は、6300億円(12年、薬価ベース)の大型市場。降圧剤の治療では一度使い始めた薬をずっと使い続ける傾向があるため、ARBを扱う多くの製薬各社がしのぎを削ってきた。
 発売は00年。ノ社はバルサルタンの商品イメージを赤色に統一した。赤は劇薬を連想させるため業界でタブー視されていたが、あえて赤を使った差別化戦略は成功し、5年後に年間売り上げ1000億円を達成する。ピーク時の09年には1400億円を売った。
 競争に勝ち抜くため、血圧を下げる効果に加え、脳卒中などの発症の危険性を下げる効果が証明されることを期待し、ノ社は大学側に臨床試験を提案していった。結局、臨床試験をしたのは5大学。このうち京都府立医大には、ノ社から1億円超の寄付金の提供があったことが3月末、情報公開請求した毎日新聞の報道で表面化した。
      ◇
 「業界全体で透明性を確保したいと取り組んでいる時期に非常に不愉快だ」。国内の製薬会社幹部は「バルサルタンの臨床試験は、企業と研究者との不透明な関係によって、公正さが失われたのではないか」という今回の疑惑に憤りを隠さない。欧米ではこの20年間で利益相反に対する取り組みが進み、日本でも本格化しているからだ。
 日本製薬工業協会(製薬協)は会員企業に対し、個々の医師に支払ったさまざまな金銭を来年度から公開するよう求めている。医学系118学会が加盟する日本医学会も、論文や学会発表の際には研究費の提供元を明示することを求める利益相反ガイドラインを11年に作成したばかりだ。

バルサルタンの座談会形式の記事広告には、日本高血圧学会を中心に有力研究者が繰り返し登場してきた。一方で、臨床試験の結果は複数の学会の診療ガイドラインにも反映され、現場の医師の治療を左右した。しかし、今年2月に京都府立医大の論文が掲載誌から撤回(取り消し)されたため、ガイドラインを見直す動きが出ている。
 疑惑の全体像を明らかにするには、研究者側へのあらゆる資金の流れの開示が不可欠なのに、利益相反に関するルール作りを各大学に指導してきた文部科学省は「製薬企業や大学が自主的に情報を公開すべきだ」(産業連携・地域支援課)と、あくまで大学などの調査待ちの姿勢を崩さない。
 宮坂信之・東京医科歯科大名誉教授は、医学系研究費の半分を民間資金に頼る日本の現状を踏まえて指摘する。「医学の発展のためには製薬企業の支援は今後も欠かせない。国策で産学連携を進めた結果として今回のような問題が起きたのだから、国は大学や企業任せではなく、積極的な対応をとる必要がある」
==============
 ■ことば

 ◇利益相反

 研究者が外部から資金提供を受けたことにより、研究の公正さを疑われる状態を指す。疑いを持たれずに産学連携を推進するには、研究者と資金提供者には資金に関する情報公開が必要とされている。


http://mainichi.jp/select/news/20130622ddm002040034000c.html

http://megalodon.jp/2013-0630-2150-59/mainichi.jp/select/news/20130622ddm002040034000c.html

http://mainichi.jp/select/news/20130622ddm002040034000c2.html

http://megalodon.jp/2013-0630-2151-33/mainichi.jp/select/news/20130622ddm002040034000c2.html

毎日新聞: 疑惑の薬・バルサルタン:/上 血圧データ、不自然な一致 4大学、別々の臨床試験

2013年6月21日 フライデー: 疑惑の薬・バルサルタン:/上 血圧データ、不自然な一致 4大学、別々の臨床試験

疑惑の薬・バルサルタン:/上 血圧データ、不自然な一致 4大学、別々の臨床試験

毎日新聞 2013年06月21日 東京朝刊
 昨年度の国内医療用医薬品の売り上げランキングが14日、発表された。1位はノバルティスファーマの降圧剤「バルサルタン」(商品名ディオバン)の1083億円。大ヒット薬は業界で「ブロックバスター」と呼ばれ、この薬もその一つ。ところが今、厳しい視線にさらされている。
 「バルサルタンには多くの効果があり、血圧を下げるだけではない」と、発売後に実施された臨床試験を基に宣伝されてきた。「だが科学的な根拠がなかったなら、国民は貴重な保険料や税金を収奪されたことにもなる」。国の薬の承認審査に携わってきた谷本哲也医師は疑惑の構図をこう解説する。
 宣伝に活用された臨床試験は、東京慈恵会医大と京都府立医大で実施された。バルサルタンと別の降圧剤を服用した二つの患者グループを対象に、血圧が影響する脳卒中などの発症状況の違いを比べた。患者グループの最高血圧(収縮期血圧)の平均値やばらつきは同じだったのに、バルサルタンの方が脳卒中などを発症した患者が少なかった。「この薬には降圧に関係なく、脳卒中などのリスクを低下させる力がある」とする論文が07、09年に発表されていた。
 ところが昨年4月、世界有数の医学誌ランセットに、これらの臨床試験への「懸念」を示す論文が掲載された。執筆した京都大病院の由井芳樹医師は、降圧剤の効果で血圧はいずれも下がるものの、下がり方には当然差が出るはずだと指摘した。臨床試験の対象となる患者を、年齢や性別、元々の血圧など属性が偏らないように二分したとはいえ、血圧が一致することは考えにくいことだった。
 さらに調べると、千葉大と滋賀医大でも、種類が異なる降圧剤を服用した二つの患者グループで、試験終了時の最高血圧の平均値が一致していた。
 由井医師は「前提として血圧が一致していないと、他の薬を飲んだグループと比較して、『バルサルタンには降圧効果以外にも優れた効果がある』と説明しにくい。血圧の値がこれだけそろうとは奇妙だ」と指摘する。
 由井医師は、バルサルタンなどの降圧剤に関する国内外の36の臨床試験結果も調べてみた。比較する2グループで、最高血圧と、最低血圧の平均値がそれぞれ一致していたのは、慈恵医、京都府立医、千葉、滋賀医だけだった。由井医師はこの結果も昨秋に発表している。
新薬の承認を目指す「治験」には、薬事法で試験中の厳格なモニタリングや監査が製薬会社に義務付けられている。しかし、今回のように市販後に行われる大学の臨床試験をチェックする公的な仕組みはない。疑惑を受け、薬の試験制度に詳しい景山茂・慈恵医大教授は「臨床試験の不正を防ぐには、各大学にサンプル調査する独立した部署を置く必要がある」と訴える。
 同様の臨床試験を実施した名古屋大を含む5大学は、疑問に答えるため、データの検証を始めている。だが学会に促されて始めた京都府立医を除けば、いずれもノ社による試験への不透明な関与が毎日新聞の報道で表面化した今年3月以降と、動きは鈍かった。
      ◇
 「日本最大の薬と研究者に関わるスキャンダル」とも言われるバルサルタン問題。影響の大きさと真相究明への課題を報告する。



RISFAX: 製薬協 ノバルティスの理事会参加に自粛要請

2013年6月21日 RISFAX: 製薬協 ノバルティスの理事会参加に自粛要請

製薬協 ノバルティスの理事会参加に自粛要請

 日本製薬工業協会の仲谷博明専務理事は20日の理事会後の記者会見で、ノバルティスファーマに常任理事会、理事会への参加を自粛するよう要請したと発表した。降圧剤「ディオバン」の論文を巡る利益相反問題を踏まえた対応で、現時点では調査は完了していないものの、手代木功会長の指示もあり、無期限での理事会参加の自粛を求めた。ノバルティスの二之宮義泰社長は製薬協の常任理事を務めているが、同日の会合から欠席している......


日刊薬業: スイス・ノバルティス ディオバン問題調査、過去10年の書類・メールも

日刊薬業: スイス・ノバルティス ディオバン問題調査、過去10年の書類・メールも

http://nk.jiho.jp/servlet/nk/kigyo/article/1226573852451.html

http://megalodon.jp/2013-0630-2144-40/nk.jiho.jp/servlet/nk/kigyo/article/1226573852451.html

上昌広: バルサルタン問題解明のための障壁 「故意犯」に如何に対応するか

上 昌広 | 「現場」からの医療改革を目指す内科医




6月14日発売の『フライデー』で、『“疑惑の降圧剤”を1000億円売った「伝説の女部長」』と言う記事が掲載された。ノバルティスファーマ社(ノ社)でバルサルタンの臨床研究を促進した藤井幸子氏の大きな写真とともに、「当時の話?知ってるわけないでしょう。直接関係ない」というコメントが掲載されていた。
彼女は、既にノ社を退社している。彼女とともに、バルサルタンの営業を担当したメンバーたちも同様だ。例えば、青野良晃・営業本部長(当時)は、べーリンガーインゲルハイム社の社長に就任している。ノ社関係者によれば、「(彼らは)社内調査の協力に消極的」という。
真相を知るのは、実務に従事した担当者だ。ところが、多くは他社に移っている。彼らは、以前勤めた会社の調査に協力する義務はない。この状況では、ノ社の調査に多くは期待できない。
実は、この状況は大学も同じだ。問題となっている京都府立医大、慈恵医大、千葉大学では、当時の責任者は何れも退職している。各大学が、独に学内調査を進めても、彼らに協力を強制することは出来ない。
医師は頻回に職場をかえる。大学の調査には限界がある。現に、京都府立医大は、松原弘明・元教授と共同研究を行った学内の三人の教授に予備調査を依頼し、「捏造はない」と早々と結論した。その後、日本循環器学会から批判され、第三者を入れた調査がやり直したが、こんな状況では、何をいっても信頼されない。
では、どうすればいいのだろう。すぐに思いつくのは第三者の学会が調査することだ。ところが、今回のような事件に関して、学会が矢面に立つことは得策ではない。
国民が知りたいのは、バルサルタンは、ノ社が宣伝する通り、有効なのか否かである。この点を明らかにするには、疑念を抱かれている臨床研究について、カルテとデータベースを付き合わさなければならない。
ところが、学会には調査をする権限も人手もない。議論は一般論に終始しがちだ。例えば、日本高血圧学会は「臨床試験に関わる第三者委員会」や、日本医学会は「利益相反委員会」(日本医学会)で議論を続けているようだが、具体的な問題に切り込んでいるとは言い難い。
では、真相究明には、どのような仕組みが必要なのだろうか。注目すべきは、臨床研究不正の多くが、故意であることだ。論文を捏造することで、研究者は業績と幾ばくかの研究費、製薬企業は巨額の利益を得ることが出来る。れっきとした「犯罪」である。「犯罪」が発覚しそうになれば、関係者は黙秘し、証拠隠滅を図ってもおかしくない。論文捏造は、過失による医療事故と同列に扱うべきではない。
「故意犯」は、本来、強制調査権を有する司法が取り扱うべきだ。ところが、医学研究は高度に専門的だ。警察には敷居が高い。
論文捏造を放置していると、医学界は信頼を失う。実は、世界中が、この問題に悩み、試行錯誤を続けている。例えば、米国では、1992年に研究公正局(ORI)という公的機関が創設され、調査、および処分を行っている。
このような組織は、日本でも必要ではなかろうか。透明性を担保し、社会が信頼してくれるなら、設立母体は官民を問わない。今こそ、医学界と製薬業界が協力して、臨床研究の信頼回復に尽力すべきである。
本原稿は、「医療タイムス」の連載を加筆したものです。




毎日新聞: 降圧剤試験疑惑:主任研究者、データに介入余地

2013年6月26日 毎日新聞: 降圧剤試験疑惑:主任研究者、データに介入余地

降圧剤試験疑惑:主任研究者、データに介入余地

毎日新聞 2013年06月26日 02時31分
 降圧剤バルサルタンの臨床試験を巡る疑惑で、京都府立医大と東京慈恵会医大の各試験は、患者データを最終的に分析する主任研究者が、試験途中でデータを見られる状態だったことが分かった。主任研究者が、バルサルタンの効果が高いとの試験結果となるよう、データを集めている現場の医師らに投薬量の調節などを働きかけることが可能だった。一連の臨床試験には販売元の製薬会社「ノバルティスファーマ」の社員が統計解析の専門家として参加していたことなどから、データの改ざんの有無が焦点になっているが、試験の手法自体に欠陥があった。【八田浩輔、河内敏康】
 ノ社の社内調査結果から判明した。臨床試験は、バルサルタンの発売後、血圧を下げる効果に加え、脳卒中などの発症を抑える効果もあるかを探ることが目的だった。両大学では、関連病院の医師らが各3000人以上の患者を登録。バルサルタンと別の降圧剤を服用する二つのグループに分け、約3年間経過を追跡した。
 今回の試験では、医師と患者には、バルサルタンとそれ以外の薬のうちの、どちらを服用するかが事前に知らされていた。この場合、主任研究者には途中段階のデータを知らせないことが必要になる。主任研究者が途中段階のデータを知ってしまうと、現場の医師に指示することで、患者の診断や投薬量に関する判断に影響を与えることが可能となるためだ。
 患者データは、委託業者が管理する「データセンター」に集積され、表向きは大学側から切り離されていた。しかし、主任研究者には毎月、業者からCD−ROMなどに記録されて途中経過のデータが送られていた。研究室のパソコンからインターネットで接続し、閲覧することもできる状態だった。
 臨床試験の統計解析の第一人者、大橋靖雄・東京大教授は「データセンターが主任研究者から独立していなかったのは非常に大きな問題。今回のような薬の効果を比較する臨床試験では通常考えられない。こうした品質保証がなされていない試験結果を信頼することはできない」と指摘する。
 バルサルタンの臨床試験は、府立医大、慈恵医大、千葉大、滋賀医大、名古屋大で実施され、バルサルタンの有効性を示した。ノ社はこれらの論文を薬の宣伝に活用し、売り上げを伸ばしてきた。昨年、「論文のデータが不自然だ」と専門家が医学誌上で指摘。今年、ノ社の社員が試験に参加していたことが判明した。
 ノ社が府立医大に1億円余の奨学寄付金を贈っていたことも明らかになっている。





読売新聞:高血圧薬臨床研究に製薬社員参加…身分伏せ論文


高血圧薬臨床研究に製薬社員参加…身分伏せ論文


Retracted(撤回された)と印字された京都府立医大の論文
 製薬企業ノバルティスファーマの高血圧治療薬「バルサルタン(商品名ディオバン)」を巡り、薬の効果を調べた大学の臨床研究に同社の社員が加わり、社員であることを伏せたまま研究成果が外部に発表されていたことが分かった。
 ディオバンは国内で年間1000億円以上の売り上げがあり、この研究成果は宣伝に使われていた。日本医学会の高久史麿会長は「研究の公平さを損なう極めて深刻な事態」として、24日に利益相反委員会を開き、実態把握と再発防止策の検討に乗り出す。
 問題の研究は、約3000人の患者を対象にした京都府立医大の比較試験。ディオバンを使うと、従来の薬と血圧の下がり方が同じでも、脳卒中や狭心症などのリスクが45%も減るというものだった。同社はこの結果を宣伝材料に使い、医師を集めたセミナーを繰り返し開いていた。
 しかし、研究データの扱いに不備があるなどとして、日本循環器学会の学会誌などに掲載された論文6本が、昨年末以降相次いで撤回された。研究の責任者の教授は、今年2月に辞職した。
 日本循環器学会の調査の過程で、同社の社員(現在は非常勤)が研究のデータ解析に加わっていたことがわかったが、論文に名前を公表しなかったり、非常勤講師だった大阪市立大の
所属と表記したりしていた。
 また、この社員は、慈恵医大、滋賀医大、千葉大、名古屋大の4大学でも、大阪市立大の肩書で同様の研究に加わっていたことが、論文などから判明した。京都府立医大と慈恵医大、滋賀医大は今年3月以降、データ改ざんの有無などを大学内部で調べている。
 スイスのノバルティス本社は、この社員の行為が同社の行動規範に違反している可能性があるとして、第三者による調査を行っている。読売新聞の取材に対して同社は「調査中でコメントは差し控える」としている。

毎日新聞: 日本医学会:「企業提供資金、明示を」 医師ら講演会発表時



日本医学会:「企業提供資金、明示を」 医師ら講演会発表時

毎日新聞 2013年06月25日 東京朝刊
 日本医学会(高久史麿会長)は24日、加盟する医学系118学会に対し、製薬企業が関わる講演会などで会員の医師や研究者が発表する際、企業からの提供資金を明らかにするよう求めた。製薬企業と研究者の不透明な関係が疑惑を招いている降圧剤「バルサルタン」の臨床試験問題などを踏まえ、企業と研究者の透明性確保に向けた取り組み強化の一環。
 国内では、企業が主催・共催する講演会は年間10万回開かれ、講演者として医師や研究者が延べ30万人参加している。医学会は要請文で、疑惑を抱かれないよう産学連携を進めるには、「発表冒頭に金銭的な関係を聴講者へ開示することが必須の条件」だとした。
 講演会で金銭関係を開示する方針については、医学会、日本医師会と業界団体の日本製薬工業協会との間で、3月に合意していた。【八田浩輔】

http://mainichi.jp/select/news/20130625ddm012040100000c.html

http://megalodon.jp/2013-0630-2134-14/mainichi.jp/select/news/20130625ddm012040100000c.html

朝日新聞: 慈恵医大調査委、カルテなど照合 高血圧薬論文問題

朝日新聞: 慈恵医大調査委、カルテなど照合 高血圧薬論文問題


 京都府立医大の同様の論文が撤回されたことを受け、慈恵医大が調査委を設置して調べている。調査委は医師や法律の専門家ら3人の学外委員を含む計8人で構成される。委員長は橋本和弘教授(心臓外科)。委員長以外の委員名は「公正な調査のため」との理由で公表していない。

 慈恵医大の論文は2007年に英医学誌ランセットに掲載された。通常の治療をした人とディオバンを加えた人とで、血圧の平均値などが通常では考えられないほど一致していることが別の医師から指摘されるなど、データに疑問の声も上がっていた。
http://apital.asahi.com/article/news/2013052400008.html?ref=rss&utm_source=dlvr.it&utm_medium=twitter
http://megalodon.jp/2013-0524-2131-51/apital.asahi.com/article/news/2013052400008.html?ref=rss&utm_source=dlvr.it&utm_medium=twitter

NHK: 薬研究に社員関与 指針改定へ


薬研究に社員関与 指針改定へ
5月24日 18時16分

薬研究に社員関与 指針改定へ
京都府立医科大学の研究チームが行った、高血圧の治療薬の効果を調べる臨床研究に、この薬を販売する製薬会社の社員が関与し、所属を伏せたまま論文を発表していたことから、日本医学会は、臨床研究のガイドラインを改定する方針を決めました。
京都府立医科大学の研究チームは、平成16年から平成19年にかけて行った高血圧の治療薬「バルサルタン」の効果を調べる臨床研究で、この薬を販売する製薬会社、ノバルティスファーマの当時の社員がデータの解析を担当したものの、所属を伏せたまま論文を発表していました。
118の学会が加盟する日本医学会は利害関係のある当事者が身元を明らかにしなかったのは臨床研究のガイドラインに反するとして、24日、非公開で会合を開き、再発防止策を検討しました。
その結果、臨床研究の倫理面に関するガイドラインを改定する方針を決め、今後、具体的な内容を協議していくことになりました。
記者会見した高久史麿会長は、「製薬会社はこの論文を薬の宣伝に活用していて、好ましくない。非常に残念な、許し難い行為で、二度とあってはならない」と批判しました。
この臨床研究を巡っては、京都府立医科大学の研究チームの6本の論文が、「データに不適切な部分がある」などと指摘を受けてすべて撤回され、研究の責任者の教授が辞職しています。

厚労相「強く指導したい」

この問題について、田村厚生労働大臣は、24日の閣議後の会見で「社員が臨床試験に加わっていたにもかかわらず、その情報を公開せず、身分を隠していたような話で、情報を提供するときに公平でないことは確かだ。強く指導していきたい」と述べ、何らかの行政指導をする考えを示しました。

読売新聞: 製薬元社員の臨床試験関与、日本医学会が批判

製薬元社員の臨床試験関与、日本医学会が批判


 製薬企業ノバルティスファーマの高血圧治療薬「ディオバン」を巡る利益相反問題で、日本医学会(高久史麿たかくふみまろ会長)は24日、東京都内で記者会見を開き、京都府立医大などが実施した薬の効果を調べる臨床研究に同社の元社員が深く関与していたことについて、「許しがたい行為で二度とあってはならない」と厳しく批判した。
 同学会は、再発防止のための運用指針を強化し、加盟する医学系118学会や大学に徹底させる。
 同大の研究は、3000人の患者を対象に、ディオバンを使うと血圧の低下が同じでも、従来薬に比べて脳卒中や狭心症が45%減ったという内容。元社員はデータ解析など中心的役割を担ったが、そのことを伏せて論文が発表され、同社は宣伝材料に使っていた。
(2013年5月24日20時13分  読売新聞)

FNNニュース: 製薬会社社員臨床実験関与 日本医学会、実態把握と公正さ審議へ

 FNNニュース: 製薬会社社員臨床実験関与 日本医学会、実態把握と公正さ審議へ

高血圧治療薬「バルサルタン」をめぐる臨床試験に、製薬会社のノバルティスファーマの社員が関与していた問題で、日本医学会は24日午後に、実態把握と研究結果の公正さを審議する会議を開く。
この問題は、ノバルティスファーマが販売する降圧剤「バルサルタン」に関わる5つの臨床試験に、ノバルティスファーマの社員が関与していたもの。
ノバルティスファーマの日本法人は、社員が関わった試験の1つの京都府立医大の論文が、2月に撤回された当時、「われわれは、一切試験に関与していない」と全面否定していた。
しかし、日本法人はその後の調査で、実際に社員が関与していたことを確認し、日本医学会などに報告した。
この社員は、5月15日付で退職しているという。
日本法人は、事実関係が誤っていたことについて、「率直に訂正して、おわび申し上げたい」とコメントしている。
今回の問題について、田村厚労相は24日朝、「ちょっと今回の事案は、ノバルティス社に対して、強く指導しなければならない」と述べたうえで、「組織ぐるみの問題があれば、大変大きな問題」と懸念を示した。
日本医学会は、24日午後1時から利益相反委員会を開き、研究結果が公正だったかどうかを審議することになる。

産経新聞: 【ノバルティス社の降圧剤研究問題】 厚労相「強く指導する」

【ノバルティス社の降圧剤研究問題】
厚労相「強く指導する」

2013.5.24 11:27
 田村憲久厚生労働相は24日の閣議後の記者会見で、製薬会社ノバルティスファーマ(東京)の社員が同社の販売する降圧剤ディオバン(一般名バルサルタン)を使った臨床研究に参加しながら、論文に身分を明示していなかった問題について「強く指導しなければならない」と述べた。
 具体的な対応については「どういう経緯であったかも含めて調査中」とし、明言しなかった。
 田村厚労相は、同社が組織ぐるみで関与していた可能性を踏まえ「そういうことであれば大変な大きな問題だ」と指摘。「利益相反が起こりそうなことに関してはしっかりと情報公開し、不信感が募らないようにしていただきたい」と注文を付けた。
 この薬をめぐっては、発端となった京都府立医大を中心とした臨床研究のほか、東京慈恵医大と千葉大、名古屋大、滋賀医大でも同じ社員による研究への関与が判明している。

朝日新聞:臨床研究に製薬会社関与か 千葉大でも高血圧論文調査へ

> >
記事
2013年5月21日5時50分

朝日新聞:

臨床研究に製薬会社関与か 千葉大でも高血圧論文調査へ


高血圧治療薬ディオバン(一般名・バルサルタン)の効果を調べた臨床研究に製薬会社が関与した疑いが浮上している問題で、千葉大は20日、同大の元教授らの高血圧論文などについて、調査委員会を設置して調査することを明らかにした。同様のディオバンの臨床研究では、京都府立医科大の論文が重大な問題があるとして撤回されている。
 千葉大の研究は高血圧患者1021人を対象に実施。ディオバンを使った患者は、他の薬を使った患者と比べ血圧の下がり方は同等だったが、心臓や腎臓を守る効果は高いとしていた。論文は2011年、日本高血圧学会誌に掲載された。
 論文には、ディオバンを販売する製薬大手ノバルティスの日本法人社員の氏名が研究チームの一員として、同社社員ではなく「大阪市立大」の肩書で記されていた。同様の臨床研究は京都府立医大、千葉大のほか慈恵医大、滋賀医大、名古屋大でも実施され、07~12年に論文が発表された。いずれも同じ社員の名前が掲載されていた。



朝日新聞: 京都府立医大、ノバルティスとの取引停止 研究関与問題

京都府立医大、ノバルティスとの取引停止 研究関与問題

 製薬大手ノバルティスの日本法人の社員が身分を明示せずに高血圧治療薬ディオバン(一般名・バルサルタン)の効果を調べる臨床研究に関わっていた問題を受けて、京都府立医大付属病院は23日、同社との医薬品の取引を当面の間停止すると発表した。
 記者会見した北脇城・副院長によると、病院が年間に購入する医薬品約40億円のうち同社分は約3億円。他社製の代替品がない場合や同社製品の使用継続を求められた場合は例外とし、患者への影響は出ないようにするという。
 取引停止の目的については「大学をあげて、ノバルティス社と癒着しているという疑いを払拭(ふっしょく)するため」などと述べた。臨床研究への社員の関与は、京都府立医大の論文のデータに疑問があるという指摘が発端となって発覚し、大学が論文について調査中。大学には同社から1億円を超える奨学

毎日新聞: 降圧剤論文:医学会「日本の信頼揺るがす」と検証要求

毎日新聞: 降圧剤論文:医学会「日本の信頼揺るがす」と検証要求

降圧剤論文:医学会「日本の信頼揺るがす」と検証要求

毎日新聞 2013年05月24日 21時29分(最終更新 05月24日 23時26分)
降圧剤「バルサルタン」の臨床試験の問題で記者会見をする高久史麿・日本医学会会長(左奥2人目)ら=東京都文京区で2013年5月24日午後3時41分、西本勝撮影
降圧剤「バルサルタン」の臨床試験の問題で記者会見をする高久史麿・日本医学会会長(左奥2人目)ら=東京都文京区で2013年5月24日午後3時41分、西本勝撮影
 降圧剤「バルサルタン」の臨床試験に製薬会社「ノバルティスファーマ」の社員が関与していた問題で、日本医学会の高久史麿(たかくふみまろ)会長は24日、東京都内で記者会見し「日本の臨床試験の国際的な信頼性が揺らいだ。許し難い行為」と強く非難した。試験を実施した▽京都府立医大▽東京慈恵会医大▽滋賀医大▽千葉大▽名古屋大には、第三者によるデータの再検証を求めた。田村憲久厚生労働相は、この日の閣議後会見で「(ノ社を)厳しく指導する」と明言。同省は近く会社側から詳しい事情を聴く。
 日本医学会は国内の医学系118学会を束ねる。一連の問題を巡って見解を出したのは初めて。
 この日は、研究の中立性を保つ仕組み作りを担当する同会の利益相反委員会が、調査を続けている日本循環器学会から事情を聴取。5大学が実施した臨床試験に社員が関与し、上司もそれを支援していたことを認めた会社側の調査報告なども踏まえ、対応を協議した。
 その後会見した高久会長らは、府立医大などの試験について「日本初の大規模臨床試験だった」「医師の処方が変わるくらい非常にインパクトのある」などと影響の大きさを強調。その上で、社員が統計解析を担当しながら、社名を伏せ、大阪市立大非常勤講師として論文が発表された点を問題視した。一方、会社側の資金を基に試験が行われたこと自体は「問題なかった」とした。
 そして、5大学にデータの再検証で説明責任を果たすよう求めた。また、「(今回の問題は)透明性のない産学連携活動に起因する。疑惑を招かない医師主導の臨床試験の実施に関するルールづくりが求められる」と提言した。
 これらの論文は医師向けの宣伝に使われてきた。ノ社は医学会に対し、これらの論文の宣伝使用をやめたことを報告したという。高久会長は「問題があると知らなかった、と言いたいのだろうが、大いに宣伝してきた道義的責任がある」と述べた。【八田浩輔、河内敏康】

 ◇利益相反

 外部との金銭関係が原因で、公的研究の公正性や適正な判断が損なわれたり、損なわれるのではないかと懸念されかねない状態をいう。医学研究資金の約半分は製薬企業など外部からで、利益相反になり得る状況が増えている。法的な問題はないが、透明性の確保が不可欠。日本医学会は、指針を策定し、論文や学会発表の際に研究費の提供元を明示することを求めている。


ミクスOnline: ノバルティス ディオバン医師主導臨床研究 元社員の関与認める 「不適切だった」 データ改ざんは不明

公開日時 2013/05/24 05:01
  • Twitter
  • 印刷
ノバルティスファーマは5月22日、ARBディオバン(一般名:バルサルタン)の5つの医師主導臨床研究に同社の元社員1人が関与していたこと、そして同社の社員であることを開示せずに論文に記載された点について、「不適切なものだった」とする調査内容を同社ホームページに同日付で掲載した。同社の社内調査を第三者の外部専門家が検証したもので、同社はこの調査結果を日本医学会、日本循環器学会、日本高血圧学会に提出した。第三者による外部専門家の検証は引き続き行われており、同社は、その結果に基づいて必要かつ適切な措置を講じるとしている。

問題となっているディオバンの医師主導臨床研究が実施された当時、元社員の管理者が、この元社員の関与を把握していたことも確認した。ただ、「元社員を関与させるという明確な戦略が当時あったとは特定できていない」と会社組織での関与は否定した。

元社員が問題となっているデータにどこまで関与したかについては「元社員がいくつかの研究でデータの解析にもかかわっていたことが判明した。これまでの調査で、意図的なデータの操作や改ざんに導いたことを示すものは判明していない」とし、データ改ざんの有無は判明していないとしている。

同社は、この問題について「きわめて重大なことと認識している」とのコメントを発表した。また、三谷宏幸社長(当時、現在は最高顧問)が2月の記者会見で、同社が医師主導臨床研究のデータ解析に関与することは不可能としていた点についても正式に撤回した。

元社員が関与した試験は、京都府立医科大学、東京慈恵会医科大学、千葉大学、名古屋大学、滋賀医科大学で行われた5試験で、いずれも医師主導臨床研究。そのうち京都府立医科大学で行われたKYOTO HEART studyの結果は、09年にEur Heart Jで論文発表されたが、13年4月に撤回されている。慈恵会医科大学が実施したJikei Heart studyは07年にLancetで発表され、12年4月に統計上の懸念が同誌内で指摘されていた。それら5つの臨床研究の内容はディオバンの販促資料として活用されてきたが、同薬の承認申請や追加適応取得には関係していない。

なお、24日に開催される日本医学会分科会の利益相反委員会では、この問題も取り上げられる予定。

The Japan News; Novartis employee joined clinical drug trial

Novartis employee joined clinical drug trial May 20, 2013

The Yomiuri Shimbun
The Yomiuri Shimbun
Academic papers based on research by Kyoto Prefectural University of Medicine that were retracted
An employee of Novartis Pharma K.K. participated in a clinical trial for one of his company’s drugs at a university, and the results of the study were published without identifying the researcher as a Novartis employee, according to sources.
Novartis used the findings of the trial to promote the product, Valsartan, a drug for high blood pressure marketed under the trade name Diovan.
Annual sales of Diovan exceed 100 billion yen in Japan.
Fumimaro Takaku, chairman of the Japanese Association of Medical Sciences, said, “This case is extremely serious because it could undermine the integrity of clinical studies.”
On Friday, the association will hold a meeting to determine whether the Novartis employee’s involvement in the clinical research skewed the results of the trial.
The association will also examine the circumstances surrounding such clinical research and consider measures to prevent a similar incident from taking place again.
The research in question was conducted by Kyoto Prefectural University of Medicine with about 3,000 patients enrolled in the study.
The published research results claim Diovan can reduce the risks of stroke, angina and related conditions by 45 percent, even if blood pressure falls within the same levels achieved by conventional drugs.
Novartis used the trial results for advertisements and repeatedly held seminars for doctors.
But since late last year, six academic papers about the research results carried in academic journals, including that of the Japanese Circulation Society, have been retracted in quick succession on suspicion that the study’s data were faulty.
A professor in charge of the clinical trial resigned in February.
An investigation by the Japanese Circulation Society concluded the Novartis employee, who is now a part-time worker at the drugmaker, participated in the analysis of the data produced by the study.
But his name was not reported in academic papers based on his work. He was only identified as a researcher affiliated with Osaka City University, where he also worked as a part-time lecturer.
Academic papers indicated the Novartis employee had engaged in similar research at Jikei University, Shiga University of Medical Science, Chiba University and Nagoya University but had identified himself only as a researcher of Osaka City University.
Since March, Kyoto Prefectural University of Medicine, Jikei University and Shiga University of Medical Science have conducted internal probes to determine whether research data involving the researcher were manipulated.
The Swiss-based parent company, Novartis International AG, is conducting a third-party probe of the incident, saying the employee’s actions may have violated its internal rules.
Responding to a Yomiuri Shimbun inquiry, the company said it could not comment because the issue was under investigation.
In the wake of the developments, the Japanese Association of Medical Sciences, which comprises 118 medical science societies, decided to hold the meeting of officials to look into the matter.
The committee will hear reports from the Japanese Circulation Society and discuss measures to prevent a recurrence.
Saburo Sone, chairman of the committee, said: “I think it’s an extremely serious problem that an employee of a pharmaceutical maker used a university’s name at several other universities. Isn’t it natural to conclude this isn’t the work of an individual but is an organized effort by the company?”
The situation exemplifies the ever-present risk of a conflict of interest when businesses and academic entities work together, observers say.
However, it is widely thought that medical research, the results of which also affect the health of the public, requires higher standards of fairness.
Repercussions widespread
By Nobuaki Suzuki / Yomiuri Shimbun Staff Writer
The Japanese Association of Medical Sciences regards conflict of interest in drug research as serious because it affects not only patients who use a drug but also other members of the public, medical circles and related industries.
The administration of Prime Minister Shinzo Abe sees medical industries as a pillar of its new economic growth strategy, which calls for increased collaboration between business and academic circles.
But if the perception that companies and universities are in collusion spreads, the government’s plans for innovation in medical technology will stall.
The public could also lose opportunities to receive the most advanced medical treatments.
In 2010, a law was passed in the United States requiring companies to disclose conflict of interest in clinical research.
The Japan Pharmaceutical Manufacturers Association also produced a guideline on conflicts of interest and will begin a system in this fiscal year that urges voluntary disclosure about provision of funds from companies to doctors.
But establishing such systems among universities and other researchers has been slow.
In the wake of Novartis Pharma case, it is expected that both companies and universities will be pressed to quickly make transparent rules and clarify their accountability to society.