2013年4月30日火曜日

日本経済新聞: 医薬研究に高い透明性が要る

医薬研究に高い透明性が要る  2013/5/31付


高血圧治療薬の効果を調べる大学の臨床研究に、製薬会社の社員が身分を隠して関与していたことがわかった。研究結果がゆがめられたのではないかとの疑いを招き、医薬品の信頼性を揺るがしかねない。製薬業界や大学は公正な研究を保証するルールづくりと順守を徹底し再発を防止すべきだ。
 この薬はスイスの製薬会社の日本法人、ノバルティスファーマ(東京・港)が販売する「ディオバン」(一般名バルサルタン)。
 京都府立医科大など5つの大学が中心となった臨床研究の結果、血圧を下げるだけでなく、脳卒中や狭心症などのリスクも抑える効果があるとされた。同社は研究結果を製品の宣伝に利用してきた。
 この臨床研究をめぐってはこれまでも疑惑が指摘されていた。府立医大の研究グループが発表した論文で不適切なデータ使用などが発覚し、論文が撤回された。
 同大の学内調査で意図的な改ざんやねつ造はなかったとされたものの、研究の責任者の教授が辞職した。教授の研究室はノバルティス社から多額の奨学寄付金の提供を受けていた。そして今回、同社の社員が論文のデータ解析に携わったことが明らかになった。
 一連の行為は公平・適正な判断が損なわれたのではないかとの疑いを招く。日本医学会が社員の関与について「二度と繰り返してはならない」と厳しく批判したのは当然だ。
 日本製薬工業協会は寄付金の提供先を公開する「透明性ガイドライン」を今年度から段階的に運用を始めた。日本医学会も再発防止策を強め、加盟する学会や大学

これからの日本の成長の柱にしていく必要がある。大学の研究と企業の製品化を円滑に橋渡しすることがこれまで以上に大切だ。
 それだけに医薬品の効果や安全性を調べる研究には透明性が求められる。医師や企業は高い倫理意識を自らに課す必要がある。



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