2013年4月30日火曜日

日刊薬業: ディオバン問題で日本医学会 論文の「COI申告違反」を認定

ディオバン問題で日本医学会  論文の「COI申告違反」を認定
( 2013年5月24日 )

都内でディオバン問題に関して会見する日本医学会の高久会長(中央)ら
都内でディオバン問題に関して会見する日本医学会の高久会長(中央)ら
 日本医学会(高久史麿会長)は24日、同日に開いた利益相反(COI)委員会後に記者会見し、ノバルティス ファーマのARB「ディオバン」(一般名=バルサルタン)の医師主導臨床試験に関する論文撤回問題についての見解を明らかにした。この問題については、日本循環器学会学会誌で掲載した「KYOTO HEART Study」の関連論文に関し、ノバルティスからの資金提供と同社社員の関与が開示されなかった「COI(利益相反)状態の自己申告違反」と認定した。

 同日のCOI委員会では、日循の永井良三代表理事が同学会誌で撤回した関連論文に関する利益相反の調査結果を日本医学会に報告した。永井氏は会見で、試験デザインなどに関する「第1報」論文ではノバルティスからの資金提供があったことが明記されていたが、その後の論文には記載されていなかったため、学会が定めるCOI開示ルールに違反したと判断したことを説明。同社社員の統計解析への関与を開示しなかったことも違反行為とした。一方、データの意図的操作やねつ造の有無に関しては「全く把握していない」とし、京都府立医科大に調査を求めると述べるにとどめた。

 COI委員会の曽根三郎委員長も、論文著者によるCOIの自己申告違反が問題に当たるとし、ノバルティス社員が「大阪市立大」の肩書で

統計解析者として関与していたことについては、「COI委員会が議論する問題ではない」と述べた。ノバルティスからの奨学寄付金が研究資金として使用されたことも「問題はなかったと考えている」とした。同社員の関与が開示されていなかったKYOTO試験を含む臨床研究5本に関しては、実施した各大学が第三者委員会を設立して試験データを再検証し、「それらの正当性を再確認することで説明責任を果たしてほしい」と求めた。

●KYOTO試験は資金的に厳しく
 会見では、ディオバンの販促活動に際し、KYOTO試験のほか、社員の関与が指摘されている臨床研究4本に関する論文の使用中止がノバルティスから報告されたことも明らかにされた。日本医学会の高久会長は「(疑念を抱かれる)論文を根拠に(ディオバンを)宣伝したことについては社会的責任を感じてほしい。道義的責任はあると思う」と述べた。ただ、会見後に記者団に対し、論文撤回の責任の所在に関しては、「最終的には論文を発表した研究者」との認識を示した。

 じほうが京都府立医科大に対して行った情報公開請求では、KYOTO試験を行った循環器内科学・腎臓内科学教室に対し、ノバルティスは2009年度から12年度までの4年間に1億440万円の奨学寄付金を提供していた。09年度には4580万円を提供している。

 使途が特定されていない奨学寄付金に関し、高久会長は「大学にはある程度自由に使えるお金がないと困る」などと主張した。ただ、大規模な臨床試験を行うには決して十分な額といえず、約3000人を対象にした医師主導のKYOTO試験は資金的に厳しい状況下で行われた可能性が高いと指摘し、「十分なリサーチができなくて、ずさんなデータクリーニングになったと理解している」と語った。



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