2013年4月30日火曜日

毎日新聞: 降圧剤論文:京都府立医大に不信 医学界「批判かわし」

降圧剤論文:京都府立医大に不信 医学界「批判かわし」

毎日新聞 2013年06月01日 02時30分




記者会見する京都府立医大付属病院の北脇城・副院長(左)ら=京都市上京区で2013年5月23日午後7時39分、森園道子撮影
記者会見する京都府立医大付属病院の北脇城・副院長(左)ら=京都市上京区で2013年5月23日午後7時39分、森園道子撮影

 降圧剤バルサルタンの臨床試験問題で、京都府立医大病院が「抗議するため」と製薬会社ノバルティスファーマとの取引を停止したところ、「当事者意識が足りない」「批判をかわすためでは」と、逆に大学側への批判を招いている。同大の臨床試験の論文は、ノ社の社員を関与させていたことが発覚して公平性が疑われ、まだ疑惑の渦中にあるためだ。
 「京都府立医大の無責任さに怒りを感じる。被害者のように振る舞い、製薬企業だけに問題があったような対応は当事者意識がなさすぎる」。5月28日の参院厚生労働委員会。この問題を取り上げた薬害エイズ被害者の川田龍平氏(みんなの党)は、語気を強めた。
 府立医大病院は同23日、「癒着を疑われかねず、抗議の意を示した」として、ノ社の医薬品を期限を定めず取引停止にすると発表。同病院の薬剤購入費は年間約40億円、そのうちノ社分は約3億円を占める。
 だが医学・医療界の視線は冷ややかだ。日本医学会の高久史麿(たかく・ふみまろ)会長は会見で「大学は社員の関与を知っていたのではないか。論文が撤回されたからと縁を切るのはおかしい。両方責任がある」と突き放した。日本医師会の今村聡・副会長も「自分たちには悪いところがないと思われるのは、いかがなものか」と苦言を呈した。
 「身内」の目も厳しい。ある府立医大職員は「最終的な顧客は患者であることに思いが至らないのだろうか」と首をかしげる。同大OBの医師は「責任転嫁して、大学から目をそらしてもらうための執行部のパフォーマンスだ」と嘆息する。【八田浩輔、河内敏康】
 【ことば】降圧剤臨床試験問題
 降圧剤「バルサルタン」(商品名ディオバン)が、脳卒中などを防ぐ効果が高いとする京都府立医大の臨床試験論文に、販売元のノバルティスファーマ社員が社名を伏せて関与していたことが発覚。ノ社から多額の寄付金も提供されていた。東京慈恵会医、滋賀医、千葉、名古屋の各大学の同種の試験にも同じ社員が関わっており、各大学が論文データが不正操作されていないかについて検証を始めている。

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