2013年7月5日金曜日

産経新聞: 背景に「治験」に厳しく「臨床」に緩い日本の法規制

【降圧剤データ操作】
背景に「治験」に厳しく「臨床」に緩い日本の法規制

2013.8.9 10:10
      治験と臨床研究の比較
      治験と臨床研究の比較
 一線の大学病院で次々と発覚したデータ操作問題。なぜ、こうした事態が起こるのか。背景として指摘されているのが、臨床研究の規制に関わる“不備”だ。
 現在、日本の医療現場では、国から新薬の製造販売承認を得るため、薬の安全性や有効性を調べる「治験(ちけん)」と、医学や薬学の進歩などを目的に医師主導で進められる「臨床研究」の2つが並立して行われている。しかし、両者が置かれている環境は大きく異なる。
 治験は薬事法による規制を受けており、信頼性を保つため、医療機関や医師が順守しなければならない実施基準(GCP)が設けられている。事前に厚生労働省に提出した計画書に基づいて研究が行われているかどうか調べる監査もあり、違反者には罰則もある。
 対照的に、臨床研究には法規制がなく、GCPに縛られることもない。各種ガイドラインや指針はあるものの、内容は主に被験者の人権配慮や個人情報保護などとなっている。
 厚労省は昨年12月、臨床研究の指針改定に向けた専門委員会を設置、倫理指針の内容充実を図っている。厚労省によると、これまでに治験と同様の監査の導入検討や、研究データを長期間保存すべきだとの意見が出されたという。
 欧米では治験と臨床研究を単一制度の下で進め、医薬品のスムーズな医療応用化実現や薬事承認につなげている。ただ、厳しい規制は時間やコストがかかるため、研究者の間からは臨床研究実施数の減少にもつながりかねないという懸念も出ている。
 それでも研究者の間では日本の臨床研究に規制が必要という声は強い。「日本は抜け穴が多く、そこを通り抜ける研究者も出てくる」。北里大学医学部臨床研究センターの熊谷雄治教授(56)は、こう話す。その上で、熊谷教授は「臨床研究にも法規制を導入して研究の質を保ち、しっかりしたデータを集めていくことこそ、日本の医薬学や臨床研究の将来にとって有益だ」と指摘している。

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