2013年7月5日金曜日

毎日新聞: バルサルタン疑惑:大阪市大の肩書「都合良かった」

バルサルタン疑惑:大阪市大の肩書「都合良かった」

毎日新聞 2013年08月22日 23時42分(最終更新 08月23日 00時54分)
 降圧剤バルサルタン(商品名ディオバン)の臨床試験疑惑で、大阪市立大は22日、製薬会社ノバルティスファーマの社員(5月に退職)が同大医学部の非常勤講師として5大学の試験に参加していたことに関する調査結果を公表した。元社員は大学の調査に対し「大阪市大の肩書を使うことはノ社にとって都合が良かったと思う」と証言した。
 ノ社はこれまで、元社員について「統計の世界では有名な人物だ」と強調し、大阪市大の非常勤講師を兼務して臨床試験に参加したことの正当性を主張していた。
 発表によると、元社員が非常勤講師だったのは2002年4月〜13年3月だが、大学での講義は1回だけで、無給だった。元社員は疑惑の発覚後、大学側の調査に応じ「大阪市大の所属を使うことは、試験をした各大学の研究者やノ社にとって都合が良かったと思う。自分自身も便利だった」と述べたという。講師就任の経緯については「以前から親交のあった大阪市大の教員を通じて大阪市大側から要請された」と説明。この教員には、ノ社から02年度、400万円の奨学寄付金が提供されていた。
 元社員は非常勤講師の1年ごとの任期更新時、自社製品を使った試験に非常勤講師の肩書で参加したことを報告しておらず、調査報告は「意図的に不利なことを隠した。極めて悪質だ」と指摘した。また、一部の試験の論文では、元社員の肩書として、実際は大学に存在しない部署名が記されていたことも分かった。
 大阪市大は、ノ社について「自社の利益を優先するあまり、元社員の試験への関与を会社ぐるみで支援していたと判断せざるを得ない。ノ社は発覚当初、元社員の関与を否定していた。このような企業姿勢は社会的に許されない」と非難した。ノ社に抗議して謝罪を求める意向を示した。
 一方、「大学としては試験に関わっていない。われわれは被害者」としたが、勤務実態を確認せず、元社員を非常勤講師として認め続けてきた自らの責任も認めた。
 バルサルタンの臨床試験は、京都府立医、東京慈恵会医、滋賀医、千葉、名古屋の5大学で行われ、血圧を下げる以外の効果を確かめた。元社員は外部に社員であることを伏せ、統計解析などを担当。府立医と慈恵医は、元社員によってデータ操作されたことを疑う調査結果をまとめている。【斎藤広子、河内敏康、八田浩輔】

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