2013年7月4日木曜日

産経新聞: 疑問多い高血圧学会の対応 【家庭医が教える病気のはなし】

【家庭医が教える病気のはなし】
(17)疑問多い高血圧学会の対応

2013.8.6 08:11 (1/2ページ)
 高血圧の診療に対して最も責任を持つべき団体の一つに、日本高血圧学会があることは間違いないでしょう。ディオバンに関する論文データ捏造(ねつぞう)について、学会の対応はどのようなものだったのでしょうか。
 学会のホームページには、この問題そのものについて一般の方に向けた説明はありません。ただ、問題に関連して、次のような記述がみられます。
 「高血圧学会としては、今回の報道により、降圧治療の大切さに疑問を持ってしまい、治療を控える方が増えることがないように願っています。また、既に治療を受けておられる方については、担当の先生とご相談されて、治療を継続されることをお勧めします」
 学会は、今回のような問題が起こっても降圧薬の効果に疑問を持たないことを患者さんに望んでいるのでしょうか? ディオバンで降圧治療をしている人で、今回の論文捏造の報道に触れて自分の治療に疑問を持たないような人がいるとは、私には想定することができません。
 さらに、「治療を控える方が増えることがないように願っています」とありますが、願うだけで何も具体的な対策は取らないということでしょうか? これでは今回の問題は、降圧治療の大切さに疑問を持たせた報道が悪いとでも言いかねない状況です。


「治療を継続すべきだ」という意見に私も異論はありません。ただ、問題そのものに対応しようとしない高血圧学会は、何の責任も果たしていないばかりでなく、問題そのものを全く認識できていないのでは、と思いたくなります。
 この見解を読むかぎり、学会は患者の疑問に答えようとせず、薬を飲ませ続けることだけに腐心しているように取られかねません。いったい何のために? 製薬会社のためでしょうか。そんなわけはないでしょう。しかし、そう取られても仕方がないような記述です。
 ディオバンを飲んでいる高血圧患者さんは主治医と相談しましょう。変更を希望すれば対応してくれると思います。高血圧の薬には多くの種類があり、ディオバンでなくてはならない患者さんはいないと思います。
 また、ディオバンだけを飲んで血圧がうまくいっている患者さんは、一度薬をやめることができるかどうか相談してもいいと思います。生活習慣に問題がなく、1種類の薬で血圧がコントロールされている患者さんの半分くらいは、薬をやめても血圧が正常という研究もあるのです。(武蔵国分寺公園クリニック院長・名郷直樹)

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