2013年7月4日木曜日

Sankei Biz: 【取材最前線】“お寒い”医薬研究現場

【取材最前線】“お寒い”医薬研究現場 (1/2ページ)

2013.8.3 11:00




製薬会社「ノバルティスファーマ」(東京)が販売する高血圧治療の降圧剤「ディオバン」(一般名・バルサルタン)をめぐる問題の経過=2000年11月~2013年7月30日
製薬会社「ノバルティスファーマ」(東京)が販売する高血圧治療の降圧剤「ディオバン」(一般名・バルサルタン)をめぐる問題の経過=2000年11月~2013年7月30日【拡大】
製薬会社ノバルティスファーマが販売する高血圧治療の降圧剤「ディオバン」(一般名・バルサルタン)を使った臨床研究の論文で、相次いでデータの不正が発覚した。
 問題の研究を行った京都府立医大や慈恵医大の研究班には、ノ社の社員=現在は退職=が身分を偽って加わっていた。元社員は血圧の値や患者の疾患などのデータ入力や解析を行い、そこにデータを操作した跡があった。研究はいずれも、ディオバンの血圧値抑制以外の効果を調べるもので、ノ社は論文を元に「ディオバンは脳卒中や狭心症も減らせる」と宣伝して販売につなげていたというから、悪質だ。
 なぜこんなことが起きてしまったのか。東京慈恵医大が7月末に公表した調査委員会の中間報告では、研究班には元社員の他にデータの解析を行える人間がいなかったという。研究を率いたリーダーは「パソコンも使えない」そうで、もし本当なら日本の研究者のレベルは相当低い。不正を行ったのはノ社の元社員かもしれないが、ノ社の社員と知りながら、不正をするかもしれないと考える想像力の欠如に加え、データ入力や解析といった論文の根幹部分を外部の人間に任せてしまう意識の低さなど、研究者側も責められるべきだ。
厚生労働省によると、「日本の治験は費用はかかるが、質は高いというのが世界での評判だった」という。今回の一件は日本の信頼失墜につながる。
 ただ、研究者たちにも“言い分”がある。京都大の山中伸弥教授が昨年、ノーベル賞受賞直後に厚労相にお願いしたのは、研究開発現場への資金面での支援強化だった。日本では研究機関に対する国からの支援が少なく、製薬会社など企業からの支援に頼らざるを得ない。ディオバン事件でも、研究を行った大学にはノ社から多額の寄付金が流れていた。
 事件を受け、厚労省は臨床研究の不正防止のための検討会を立ち上げる。しかし、罰則を設けて「不正」を減らすことはできても、画期的な研究にはつながらない。山中教授のノーベル賞受賞には、日本中がわいた。こうした世界的な研究成果を生むためにも、国民が納得できるお金の使い方を話し合うことが今、何より求められているのではないか。(厚労省担当 道丸摩耶/SANKEI EXPRESS



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