2013年7月1日月曜日

東京都済生会中央病院: バルサルタン(ディオバン錠)採用中止のお知らせ

バルサルタン(ディオバン錠)採用中止のお知らせ

 すでに新聞やテレビなどのマスコミで広く報道されていますが、ノバルティスファーマ(株)が製造販売している降圧薬であるバルサルタン(ディオバン錠)に関する国内で行なわれた臨床試験の信頼性が問題となっています。
  この臨床試験はバルサルタンの市販後に医師主導臨床研究として行なわれたもので、現在、特に問題とされているのは京都府立医大が中心となって行なわれたKyoto Heart Studyです。この研究は、通常の降圧薬治療群と通常治療にバルサルタンを追加した群との間で脳卒中や狭心症などの血管障害の発生率に差があるかどうかを調べたものです。その結果、バルサルタンを加えることにより血管障害の発生率が明らかに低下するという良い結果が報告されました。しかし、今年になってこの研究に当時ノバルティスの社員であった者が身分を明かさずに参加し、しかも統計解析など試験結果を導くうえで重要な業務に関わっていたことが明らかになりました。これを受けて、この研究結果を発表した5つの論文が海外誌を含めた医学雑誌から掲載を削除されました。
 京都府立医大はこの研究の信頼性について独自の調査を行ってきましたが、7月11日に調査の結果を発表し、この研究ではデータの改ざんが行なわれた可能性があること、ならびにバルサルタンが血管障害の予防に有効であるとした結論に誤りがある可能性が高いことを発表しました。
 バルサルタンは降圧薬として降圧効果があることは間違いありません。しかし、バルサルタンの特徴とされてきた血管障害の発生を予防する効果について疑問が提出されたこと、また、Kyoto Heart Study以外にも同様の結果を発表した国内の臨床試験にやはり上記の人物が関わっていたことも明らかになっていることから、同種薬剤が多数存在する中であえてバルサルタンを処方する理由は少ないと言えます。また、特徴とされてきた効果に疑問が提出されている薬剤を漫然と使用することは倫理的にも問題がありますので、当院では8月5日(月)からバルサルタンを含むディオバン錠、コディオ配合錠、エックスフォージ配合錠の採用を中止することに決定しました。したがって、上記の薬剤を服薬中の患者さんは次回処方時より代替薬へ処方変更をさせていただきますので、ご了解のほどよろしくお願いいたします。なお、この薬剤の降圧薬としての効果と安全性には問題はありませんので、処方変更時まで服用を急に中止することは危険ですので絶対にお止め下さい。
 今回の件では多大なご心配とご迷惑をおかけして大変申し訳ありません。疑問な点がございましたら、当院薬剤部担当者、または担当医までご遠慮なくお問い合わせ下さい。
平成25年7月 22日 院長



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