2013年4月30日火曜日

日刊薬業:【TREND】終わらない「ディオバン問題」 開示違反判明、なお残る疑惑

http://nk.jiho.jp/servlet/nk/kigyo/article/1226573635179.html
http://megalodon.jp/2013-0615-0636-57/nk.jiho.jp/servlet/nk/kigyo/article/1226573635179.html

【TREND】終わらない「ディオバン問題」 開示違反判明、なお残る疑惑
( 2013年6月10日 )

 ARB「ディオバン」の論文撤回問題を受け、ノバルティスファーマが5月下旬、同剤に関する5つの医師主導臨床試験に元社員が関与していたとする社内調査結果(途中経過)を明らかにした。複数の試験でデータ解析に関わっていたが、社員であることを論文で開示していなかった。日本医学会の調査では、同社からの奨学寄付金の存在を論文に明記していないケースもあった。

 日本医学会の利益相反(COI)委員会は、元社員が関与した試験の一つ、京都府立医科大の試験「KYOTO HEART Study」について「COI状態の自己申告違反」に当たると認定。厚生労働省もノ社に厳重注意した。これでCOIの情報開示に問題があったことははっきりしたが、試験データ自体への疑惑はまだ晴れていない。

 今回の問題は、KYOTO試験の論文がデータの不備で日本循環器学会の学会誌で撤回されたことが発端。試験の統括責任者はデータ入力に誤りがあったことは認めたものの、「論文の結論には影響しない」と主張していた。しかし他の試験では見られないデータの不自然さがあるとして、“ねつ造”の可能性を疑う声は根強い。薬価ベースで年間1000億円以上の国内売上高を記録していることもあり、社会的な関心も高い。

 ノ社の三谷宏幸社長(当時)は2月の会見で、奨学寄付金の提供は認めつつ、社として論文データには関与していないと説明。だが4月下旬、スイス本社が元社員と臨床試験の関わりについて調査を始めたことが明らかとなり、5月下旬、元社員の試験への関与を正式に認めるに至った。

 関与していたのは同大のほか、東京慈恵会医科大、千葉大、名古屋大、滋賀医科大がそれぞれ実施した医師主導臨床試験。

 KYOTO試験では、最初に学術誌に掲載された論文で、元社員が統計解析担当者として名を連ねていた。非常勤講師を務めていた大阪市立大の肩書のみで社名の記載はなかった。日本医学会の高久史麿会長は、「医学研究の倫理だけでなく、社会の倫理からいってもおかしいと思う」と疑問視する。

 同試験ではまた、日本循環器学会誌、欧州心臓病学会誌に掲載された計3本の論文に、奨学金の存在や元社員の名前が記載されていなかった。日本循環器学会の永井良三代表理事は、「COI情報の開示が不十分であったことについては大変遺憾」と話す。

●データ疑惑も十分に説明を
 元社員が関与した試験については、データに疑問を投げ掛ける声もある。医学界で大きな波紋を呼んだのは、京都大の医師が昨年4月の英医学誌ランセット上で示した懸念だ。同誌に掲載された慈恵医大の試験結果のほか、京都府立医大、千葉大の試験結果について、ディオバン投与群とARB以外の降圧剤投与群との間で、血圧の平均値と標準偏差の多くが一致していることから、「奇妙に見える」と疑問視した。

 永井氏は、KYOTO試験でのデータねつ造の有無について「把握していない。カルテに戻って調査しないと分からないだろう」と指摘している。

 現時点でノ社は「意図的なデータの操作や改ざんに導いたことを示すものは判明していない」としているが、その背景や根拠については触れていない。

 ノ社や各大学の調査は継続中だが、最終調査結果では、COI問題だけでなくデータ疑惑に対しても、納得のいく説明が求められる。それができなければ、真の問題解決には至らない。(栗田賢一)

【Yakugyo Jiho】2013年6月10日号[NO.101]より
【表】「ディオバン問題」の主な動き
2012年
12月27日
日本循環器学会誌が京都府立医科大の医師主導臨床試験「KYOTO HEART Study」の論文2本を撤回
2013年
2月1日
欧州心臓病学会誌がKYOTO試験の論文を撤回
2月12日
ノバルティス ファーマの三谷宏幸社長(当時)が会見で、論文データへの関与を否定
2月末
KYOTO試験の統括責任者が同大を辞職
4月下旬
ノ社のスイス本社による調査開始が明らかになる
5月22日
ノ社が社内調査の途中経過を日本医学会などに報告。元社員が5つの医師主導臨床試験に関わり、複数の試験でデータ解析に関与していたことを認める
5月24日
日本医学会利益相反委員会がKYOTO試験について「利益相反状態の自己申告違反」と認定
5月27日
厚労省がノ社に対して口頭で厳重注意

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