2013年4月30日火曜日

東京新聞: 降圧剤問題 臨床データ操作判明 京都府立医大「論文、誤り濃厚」

降圧剤問題 臨床データ操作判明 京都府立医大「論文、誤り濃厚」


 製薬会社ノバルティスファーマ(東京)が販売する降圧剤ディオバン(一般名・バルサルタン)を使って京都府立医大の松原弘明元教授が実施した臨床研究について、府立医大は十一日、論文に使われたとされる解析用データに人為的な操作があったと発表した。
 臨床研究は、日本人の高血圧患者約三千人のデータから、ディオバンがほかの降圧剤より脳卒中や狭心症を減らせると結論づけたが、府立医大は調査の結果、「この結論には誤りがあった可能性が高い」とした。
 多数の患者が参加する臨床研究でデータが操作されるのは極めて異例。誤った情報をもとに現場の医師はこの薬を処方している可能性もある。今回の研究にはノ社の社員が参加し、大学側に寄付金を出しており、企業が関与する研究の在り方が問われそうだ。二月に退職した松原元教授は大学側の調査に「操作はしていない」との趣旨の発言をしている。
 記者会見で、吉川敏一学長は「ご迷惑とご心配をおかけし、おわびする」と述べた。府立医大は降圧効果自体には問題なかったとした。操作を誰がやったのかは不明としたが、刑事告発なども視野に協議している。
 今回の調査では、カルテが確認できた約二百二十人の患者について脳卒中や心不全などの発生数に着目。カルテには記載のない病気が、論文に使われたとみられる解析データには存在したり、カルテに記載のあるものが、解析データには無かったりするケースが計三十四件見つかった。
 操作はディオバンを使った患者のグループでは病気の発生数を減らし、使っていないグループでは発生数を増やす傾向があった。関係した他の病院の症例でもデータ操作の可能性があるという。この臨床研究では、ノ社の当時の社員が参加。統計解析担当とみられるが、関連の論文に名前を連ねる際、所属を明示していなかったことが判明。松原元教授の研究室がノ社から大学を経由し、一億円超の奨学寄付金を受けていたことも分かっており、研究の中立性に疑義が持たれている。ディオバンは年間の売り上げが約一千億円以上で、ノ社の看板商品。
 ディオバンを使い、ノ社の社員が関与した研究は東京慈恵医大をはじめ千葉大、名古屋大、滋賀医大でも実施され、各大学が調査するなどしている。

◆操作確認できず 製薬会社が反論

 ノバルティスファーマは十一日、京都府立医大の報告書は記述が不十分なため、研究の過程で「恣意(しい)的なデータの操作があったとは確認できない」とのコメントを出した。
 報告書はノ社の社員(退職)への聞き取り要請をノ社が断ったとしたが、「本人の強い意思により実現しなかった」と反論している。

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