2013年4月30日火曜日

毎日新聞: 降圧剤論文:医学会「日本の信頼揺るがす」と検証要求

毎日新聞: 降圧剤論文:医学会「日本の信頼揺るがす」と検証要求

降圧剤論文:医学会「日本の信頼揺るがす」と検証要求

毎日新聞 2013年05月24日 21時29分(最終更新 05月24日 23時26分)
降圧剤「バルサルタン」の臨床試験の問題で記者会見をする高久史麿・日本医学会会長(左奥2人目)ら=東京都文京区で2013年5月24日午後3時41分、西本勝撮影
降圧剤「バルサルタン」の臨床試験の問題で記者会見をする高久史麿・日本医学会会長(左奥2人目)ら=東京都文京区で2013年5月24日午後3時41分、西本勝撮影
 降圧剤「バルサルタン」の臨床試験に製薬会社「ノバルティスファーマ」の社員が関与していた問題で、日本医学会の高久史麿(たかくふみまろ)会長は24日、東京都内で記者会見し「日本の臨床試験の国際的な信頼性が揺らいだ。許し難い行為」と強く非難した。試験を実施した▽京都府立医大▽東京慈恵会医大▽滋賀医大▽千葉大▽名古屋大には、第三者によるデータの再検証を求めた。田村憲久厚生労働相は、この日の閣議後会見で「(ノ社を)厳しく指導する」と明言。同省は近く会社側から詳しい事情を聴く。
 日本医学会は国内の医学系118学会を束ねる。一連の問題を巡って見解を出したのは初めて。
 この日は、研究の中立性を保つ仕組み作りを担当する同会の利益相反委員会が、調査を続けている日本循環器学会から事情を聴取。5大学が実施した臨床試験に社員が関与し、上司もそれを支援していたことを認めた会社側の調査報告なども踏まえ、対応を協議した。
 その後会見した高久会長らは、府立医大などの試験について「日本初の大規模臨床試験だった」「医師の処方が変わるくらい非常にインパクトのある」などと影響の大きさを強調。その上で、社員が統計解析を担当しながら、社名を伏せ、大阪市立大非常勤講師として論文が発表された点を問題視した。一方、会社側の資金を基に試験が行われたこと自体は「問題なかった」とした。
 そして、5大学にデータの再検証で説明責任を果たすよう求めた。また、「(今回の問題は)透明性のない産学連携活動に起因する。疑惑を招かない医師主導の臨床試験の実施に関するルールづくりが求められる」と提言した。
 これらの論文は医師向けの宣伝に使われてきた。ノ社は医学会に対し、これらの論文の宣伝使用をやめたことを報告したという。高久会長は「問題があると知らなかった、と言いたいのだろうが、大いに宣伝してきた道義的責任がある」と述べた。【八田浩輔、河内敏康】

 ◇利益相反

 外部との金銭関係が原因で、公的研究の公正性や適正な判断が損なわれたり、損なわれるのではないかと懸念されかねない状態をいう。医学研究資金の約半分は製薬企業など外部からで、利益相反になり得る状況が増えている。法的な問題はないが、透明性の確保が不可欠。日本医学会は、指針を策定し、論文や学会発表の際に研究費の提供元を明示することを求めている。


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